巨額の売り上げを出しているはずなのに、税金を取れない――。各国の税務当局が巨大プラットフォーム事業者を相手に地団太を踏んでいたころ、実は日本の国税当局は15年前、ネット通販大手「アマゾン」に戦いを挑んだことがあった。当時、その一端は報じられたが、その後、アマゾン対東京国税局はどう決着したのか。当時を知る関係者らへの取材で、その詳細が明らかになった。
プラットフォーム事業者に対する課税をめぐっては、10年以上前は、例えば、日本でアマゾンを使って本を購入しても、事業拠点が米国にしかなければ法人税は米国で支払い、日本には納めないことになっていた。
しかし、国際課税ルールの見直しが進み、全世界の売り上げが200億ユーロ(2兆6千億円)超などの条件を満たす企業については、市場のある国に利益が分配される仕組みが来年から始まる。アマゾンを含むプラットフォーム事業者も対象になるとみられている。
日本には税金をあまり納めない状況が主流だった2009年7月5日。朝日新聞は朝刊1面で、東京国税局がアマゾンに課税したことを報じた。
[アマゾンに140億円追徴 国税局、日本事業分に課税]
その一報は、瞬く間に世界に知れ渡った。それだけ、各国はアマゾンへの課税に頭を悩ませていた。
当時、アマゾンはすでに世界各国にネット通販市場を持っていたが、売り上げと中枢機能は本社のある米国に集まる方法を採っていた。
当然、税金も米国に集中する。
「PEが陳腐化」 国税に募る危機感
これに疑問を持ったのが東京国税局だった。「PE(恒久的施設)なければ課税なし」という国際課税の基本ルールに基づき、利用客のいる日本には応分の納税を求められないか、かねて検討していた。
PEとは支店や工場といった事業を行う場所のことだ。
これが自国になければ課税ができないというのが、1920年代から続く国際的な鉄則だ。反対にPEがあれば、そこから生じる利益のすべてに課税することができる。
アマゾンには、日本法人「アマゾンジャパン」があった。
しかし、米国本社側から手数料を受け取って市場調査する会社という建て付けで、あくまで本社とは別会社だった。
日本法人は手数料収入を申告していたものの、ネット通販という「本業」収入に比べ微々たるものだった。
「PEを陳腐化させるビジネスモデルが横行している」
危機感を強めていた東京国税局は国内で、PEと認定できそうなアマゾンの施設を見つけて、本業が日本国内で上げた利益に課税しようとアマゾン側に対する税務調査を始めた。
アマゾン側から詳しくヒアリ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル